ジギー・ポップは死んだ

もう死んだ人よ

アンダー・プレッシャーの答え合わせ

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戦艦ポチョムキンを見た。

 

初めて無声映画というものを見た。

ずっと気になってはいた。けど手をつけずにいた。

わたしの背中を押したのは、フランシス・ベーコンの画集に『戦艦ポチョムキン』というワードが出てきたから。

ベーコンの絵には、口を大きく開けている人物画がたくさんある。戦艦ポチョムキンの『オデッサの階段』と呼ばれる章の、銃撃されて左目が血まみれになって叫ぶ眼鏡の女性がモチーフなのがよくわかった。ズレた眼鏡まで再現して描かれているしね。

 

フランシス・ベーコンに興味を持ったのは、デヴィッド・リンチからだな。ベーコンとエドワード・ホッパーに影響を受けておられるらしい。『イレイザー・ヘッド』を見た時からファンなんだ。ベーコンもリンチも、下の歯がはっきり見える程大きく口を開けて、人間が叫ぶ様を画に捉えることで「強烈な不安感」を表現しているように思う。

ストーリーに追いつけなくて『ツイン・ビークス』は見れてないんだけどさ。赤い部屋、すごく良いよね。

 

 

戦艦ポチョムキン』の存在を知ったのはもっぱらクイーンの『アンダー・プレッシャー』という楽曲からだった。

小学生の頃、この曲のMVをDVDで見ていた時、恐怖を覚えたのが、上の恐怖に満ちた表情で叫ぶ女性の顔である。戦艦ポチョムキンが引用されていたのはこの女性開けた口をほんの少し閉じる間の一瞬だけなのだけれど。わたしはこの女性の顔を見るたびに不安とそこはかとない程度の恐怖を感じていた。これは、きっと古いホラー映画のワンシーンなんだと思っていた。

というのも、この『アンダー・プレッシャー』のMVにはドラキュラなのかフランケンなのかわからんような背丈の高い人物がゆらりと映っていたり、川を流されパニックな人の様子が引用されていたりして。そんな感じでスリルある映画のシーンを引用しているのかと思ったのだ。

実際に『戦艦ポチョムキン』を見て。たしかにこの例のシーンもある種の「スリル」と言えばそこまでなのだけれど。もっともっと生々しいものであった。

この女性は庇っていたのだ。乳母車に赤ん坊が乗っている。しかし目の前からコサック隊が銃を手に整列して一歩一歩と攻めてくる。

オデッサの階段ロシア帝国軍の襲来と、銃撃とで大パニック。段差により先に進めなくなった乳母車の母は背に乳母車を隠して我が子を庇うのである。それも虚しく、母は倒れ、子も、階段を猛スピードで下っていく……というより、落ちていくあのシーンは確かに実に印象的であった。

 

けれども!同志たちよ。

わたしが一番おぞましかったのはやはり中にウジ虫が湧いてひしめきあっていたあのシーンであろう。

そして戦艦内での反乱の暴力シーンに、わたし自身の具合が悪かったのか。胸が苦しくなってしまった。

 

そうして、ブタをもっと丁寧に扱いなさいね。耳から握らないで!

食べるにしても。

 

 

 

『アンダー・プレッシャー』のMVはとても良くて。クイーンには珍しく演奏シーンが一切ない映像構成なのだけれど。

わたしは車がごうごうと燃えていたり、ビルが爆発して解体されていく映像が好き。

ということに思いを馳せていたら、そういえば。『T2 トレインスポッティング』のエンディング映像も。ビルが崩れ落ちていく映像だったわね、ということを思い出したのである。レディオ・ググ。