ジギー・ポップは死んだ

もう死んだ人よ

ばあちゃんの骨拾い

訃報を聞かされた。大叔父が亡くなったらしい。

父方の祖母の弟だ。心臓を患ってたらしい。

何週間か前、大叔父の娘(すなわち父のいとこ)と会ったが、大叔父の容態についてはなにも聞かなかった。心臓が悪かったことはもちろん、身体が悪くて入院していることも、知らなかった。

なんでこう、うちの親戚どもは隠蔽体質なんだろね。まただれかが突然死んでいきそうで、怖いよ。

 

これで喪中は四年連続記録に突入した。

 

わたしは、父と共に通夜に参列することにした。

ほんとうは葬儀に行きたいのだが、病院の予約を入れてしまっている。また、絶妙に遠方で博多市で通夜・葬儀が執り行われる。

博多市の近辺に住んでる弟はどうするんだろ、と思った。

わたしは結構人の情に弱いところがあるので、やはり世話になった人との最後の別れには立ち会いたいという思いを大切に、ここ3回の通夜葬儀に参加してたわけだが。

大叔父はもう十数年会ってないし、会う時は決まって別の人の法事。

県内といえど、市が違えば、都市が違えば関わりは薄かった。

訃報を聞いてショックではあったけど、悲しさはそんなになかった。

 

母も弟が通夜に行くのか気にしていた。ああ、母親は来ないよ。うちの家庭は仮面夫婦。将来的には離婚決定。しかしわたしがゴネて精神を壊したから何となく有耶無耶になっちゃった。

母は「コロナになった時(弟は)一人やけ(看病する人がいないだろう)。行けせんでって(父に抗議を)言っとって」と言われた。

ああ、父方の、わたしのひいばあちゃんが死んだ時にも葬式に出るな、って言われたなぁ。ということを思い出していた。

仮面夫婦を続けるには子どもが二人の言葉の橋渡しをしてコミュニケーションを円滑にしてやる必要がある。いつもの他愛もない内容だとだるさが増すのだが、なんかこういうシビアな内容になると、すさまじく「これはわたしの出番だ」とばかりに父親にお伝えした。

「弟は明日来るって?

ママは『コロナだから行くな』って反対してるけど…」とこっそり教えた。

父は「来るよ」「でも強制はしてないけん」と言っていた。

ふむ、ここはわたしからも弟へ助太刀をしてやるしかない、と思った。

 

わたしは弟にLINEをした。

『明日お通夜来るのかい?

ママが「コロナやけ控えとき〜」と言ってたことだけ』と伝えた。それに加えて、一人暮らしなのにコロナに感染して自宅療養なんかになったら、本人がきつい思いをするだろう、と。

弟は『行くよーん!!』とかなりノリノリの返事。

そして、その次に届いたメッセージを見てなんだかジーンと来てしまった。

『(ひい)ばあちゃんの骨を拾わなかったの普通に後悔してるから』だそう。

 

父方の曽祖母が亡くなったのはコロナがまだ世に蔓延り始めてすぐのころで、はじめての緊急事態宣言が出されて、解除された直後だったろうと思う。

曽祖母と血縁はない母と、母方の祖母は葬式には出るな、と説得してくる。特にわたしは保育士をしているのだから。園にウイルスを持ち帰って、ばら撒いたら大変だ、と。

その言い方もまた、声に悪意がこもっている。わたしの母親はこういう話し方が上手いのだ。声色に、自分の感情をむき出しにして、相手に伝えるのが上手いんだ。わたしはそんな母と祖母の「行くな」のやりとりを聞いていて泣いてしまった。わたしのだいすきな曽祖母。わたしを愛してくれた曽祖母をわたしの母と祖母は蔑ろにしている、と感じてしまったからだ。

しかし、せめて葬式だけでも出たい、と親の抑止を振り切って葬儀には出た。

母からは「火葬場にはついていくな」と言われ、わかった。と応じたが。

やはり、わたしは火葬場でのお別れも大切だと思う。

 

8歳の時に叔父を亡くした時、悲しくてひたすらに泣いていた。しかし、叔父の遺体が焼かれて骨になって出てきた時、悲しみがスッと軽くなったのを感じた。

生まれたままに、育ったままの姿でいられる最後の時を見守りたいし。あの、誰が着火ボタンをどのように押すか、ってのにドラマがあるんだよな、ってことに。これは祖父の葬式の時に気がついたんだよね。

火葬場は必見だってば。

 

母との口約束に叛いて、弟と火葬場まで行った。

しかしここで二時間弱の待ち時間、この間に感染してしまうリスクがある。と思い、わたしたちは骨までは拾わずに帰ってきた。

 

しかし、弟も無念に感じていたんだなあと思ってわたしかなかしいきもちになった。

わたしだけだと思ってた。こんなに自分の境遇にへこたれて精神まで壊してしまったのは。しかし、弟も弟でいまだに母親の言葉や態度、顔色に縛られとるのだ。

そして何より、弟が何だかさ、わたしと同じように。曽祖母に愛着を感じて、きちんと見送ってやりたかったな、って後悔してるところにもグッときたり、悲しくてガクッときたりした。

 

 

 

ちょっと眠剤で頭がふわふわしていて

あまりすっきりとした文章が書けないんだけど

わたしの弟からいただいた教訓です。

『親戚の葬式には積極的に出ろ』