ジギー・ポップは死んだ

もう死んだ人よ

【ネタバレ含】君たちはどう生きるか、を見た。

f:id:anzubeya:20230715120040j:image

 ブーちゃんず、みんなでぞろぞろ映画館に行って参りました。

本当は公開初日に行きたかったけど、諸用があって行けなかったので。公開から翌日の朝一番の回を予約して見に行きました。「ジブリの新作やるんだよ」とそそのかしたら簡単について来た母親と共に。

 

 

 

 ここから先はネタバレを含むので映画を未視聴の者はあまり読まないように。

 

 

 まず見終わって最初に出た感想、「駿は何が言いたかったのだ?」

フライヤーのアオサギ人間と『活劇冒険ファンタジー』ということしか知らずに見に行った。そのタイトルからてっきりまた駿に「生きろ!!!!!」って言われるものだと思っていたが違った。

 

 まず、あのフライヤーを見て皆が予測してたように妖艶な姿をしてはいなかった。あのアオサギは。中には鼻がぶつぶつのぶくぶくの気色の悪いおじさんが入っている。

 

 時代は戦時中から始まる。ストーリー全体を見た感じとして、なぜこの時代背景に設定したのかまことに謎である。ということを母親に話したら、「駿の時代なんじゃないの?」と言った。そうか。戦争をまだ知っているお年頃。描きたかった時代なのかもしれない。もっと戦争モノなのかと、少し期待して見てしまったところがある。わたしも確かに思ったよ、『火垂るの墓』始まったのかな、って。

とはいえ、主人公の眞人は戦争の最中に火事で母親を亡くしてしまった。東京を離れ、父親と共に新しい母親の豪華な屋敷で暮らすことになった。新しい母親、夏子のお腹の中には新しい命があって、もちろん夏子はその誕生を楽しみにしているのだけれど、眞人は複雑な思いだったと思う。夏子が眞人の手を取って自分の腹を触らせた時、えも言われぬ、ギョッとした顔をしていたから。そしてことあるごとに眞人は夏子のことを継母ではなく「お父さんの好きな人」と説明し距離を一定に保っていた。

 

 石で自分の頭を殴る眞人を見て、先日発狂して頭を殴りまくった自分と重ねてしまった。彼は現実に、どうしようもない気持ちを抱えて、それを自分の側頭部にぶつけたのだと思った。いやいや、石で頭を打っただけではそうはならんだろ、というくらいのたくさんの血が出て、屋敷に帰るとばあやたちに甲斐甲斐しく世話をされた。このばあやたちとの関わり、もう少し見たかったかも。なにせたくさんいたからね。もう少し一人ひとり、見たかったかなぁ。

 奇妙な塔の中に入ってしまってからは、少しハウルっぽさを感じた。世界観がね。ヒミの家の中とか。ハウルの城の内装を彷彿とさせた。

 

 謎なのが、なぜ夏子は森の中へ、塔の中へ消えたのか。そして何故、帰ることを拒み部屋に篭ってしまったのか。ということである。特に説明がなかったように思える。夏子が拒まなければもっと楽に戻って来れたはずである。

そして何故アオサギは眞人を誘うのか。本当の母親は死んでいない、という言葉で眞人の興味を惹き、誘い出すのだが、それは、一体何故なのか。よくわからない。眞人があの世界に呼ばれたのは、たぶん、大叔父が呼び寄せたのだろうけど、大叔父とアオサギが組んでいたわけでもあるまいし。

ヒミが久子であるということは、夏子を「妹ね」と話したことと、過去に久子が神隠しにあったという説明のシーンの、少女時代のシルエットですぐにわかった。出会った時はそのようなことは言っていなかったのに(しかも自分はもう死んでいると自認していた)、どこの段階で眞人が自分の未来の息子だと分かったんだろうか。

 

 見ている間はすごく面白くて、見入ったさ。でも終わってみたら、一体何が言いたかったのか。さっぱりわからなかった。見直してもこれは分かるまい。

 

 客席は異常に静まり返っていて誰も物音一つ立たなかった。エンドロールでも立ち上がる者はおらず、観客は誰も何も言わずに静かに劇場を去っていった。喋っていたのはわたしの母親だけである。「え、アオサギって菅田やったん?」わたしは信じないぞ。あのおじさん声が菅田将暉だったなんて。

 

 ま、結果として眞人は「あまり好きじゃない」と語った現世に戻り、自分の新たな環境を受け入れ(夏子母さんと呼ぶようになった)、母親の死(ヒミとの別れ)も受け入れて。生きて行くために回路の扉を開いて元の世界へ。夏子とそれからキリコと共に帰って行った。

君たちはどう生きるか。眞人は、現実を受け止めて、生きていくことにしたのであった。

 

 

f:id:anzubeya:20230716210415j:image