元首相が亡くなった。とてもショッキングな事件だった。政治のことなんて何も知らないけど、それでもショックだった。
テレビでは、銃撃されたというニュースが速報でやっていた。まだ午後一時過ぎだった。
心肺停止だと報道されていた。
思い起こしたのはあの小学六年生の6月25日のことである。
朝起きたら、ニュースにデカデカと報道されていたのが、『マイケル・ジャクソンさん 心肺停止』という情報であった。
わたしはマイケルがそこそこに好きだった。英才教育を受けてきた。わたしの父方の祖母の妹はマイケルオタクで、リビングには色褪せたポスターが貼ってあったし、ダイアナ・ロスがドロシー役を、マイケルがカカシ役をやっているオズの魔法使い『ウィズ』のDVDを貸してくれたり。
自身もマイケルに負けない真っ黒い髪をソバージュにしていたりして。わたしの、フレディ・マーキュリーを真似したぱっつん前髪みたいだ。
そんな大叔母の影響で、わたしもマイケルが好きだったんだ。
わたしはマイケルのニュースを見ながら朝食を食べて歯を磨いて着替えをして。朝の支度をした。マイケル・ジャクソンがたいへんだ。
嘘みたいな日だな、と思いながら学校に行った。
マイケルのことももちろんなのだが、この日はなんとわたしはサーカスを見に行く予定だったのである。
父が仕事がお休みで。地元にサーカス団が来ていたね。弟と二人して小学校を早退してサーカスに行ったんだ。
クラスの友だちには「親戚の赤ちゃんが生まれそうだから」(実際、はとこの誕生日が2009年6月25日あたりだった)とごもっともそうな嘘をついて早退けした。
サーカスをひとしきり楽しんで帰ってきたら、マイケルは死んでた。あのマイケル・ジャクソンが死ぬなんて。
生きてたんだなあ、マイケルって。
マイケルが生きてるうちにもっとマイケルの生にありがたみを感じながら生きればよかった。しかしあの時のわたしはまだクイーンフリークも二年目。まだ幼かったし、まだ洋楽を耳で聴いて、目でビジュアルを追うことしかできなかった時分だった。
今日も元首相の容態が気になりつつ仕事に出かけた。家に帰り着いたら、ちょうど速報で死亡確認が発表された。マイケル現象だと思った。
わたしの最近のお気に入りマイケルは『P.Y.T.(Pretty Young Thing)』
プリティー・ヤング・シングと呼んでもらえる間に聴きこまなくては。
マイケル好きな大叔母と会うために走る車の中で延々とマイケルを聴いていたんだよ。マイケル好きな大叔母の兄貴、つまりわたしにとって祖母の弟、大叔父の通夜のために、福岡市まで行かなきゃならなかったんだ。
今年の初盆のお供に。